現在、乳がんは女性が罹患するがんの第1位です。日本女性の約14人に1人、年間約7万人の女性が乳がんと診断されています。しかし、死亡率は大腸・肺・胃などのがんよりも低く5位となっています。乳がんは早期に発見して治療すれば、治る確率の高いがんです。正しい知識を持って、月に1度の自己チェックと年に1度の乳がん検診を心がけましょう。
乳がんからあなた自身を守るために!
乳がんは、30代後半から急激に増え始め、40代後半〜50代前半の閉経前後に最も発症率が高くなります。乳がんの発生に強く影響を与えるのが、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)です。エストロゲンは性成熟期(初潮〜閉経)の女性の健康と妊娠・出産を支える重要なホルモンです。このエストロゲンには、乳腺組織を刺激して細胞の増殖を促す作用があり、乳がん発症に関係すると考えられています。エストロゲンは、妊娠中や授乳中には分泌が抑えられるため、以前の日本女性は出産回数が多く、それだけエストロゲンの影響を受ける期間が少子化の現代よりも短く、乳がんの発症率も1/3以下でした。栄養状態が向上して発育も体格もよくなり、初潮が早く、閉経が遅くなっていることも女性がエストロゲンにさらされる期間を長くしています。また、動物性脂肪が多く高カロリーの欧米型の食生活による肥満も問題です。脂肪組織にはエストロゲンを合成する酵素があり、特に閉経後の乳がんの発症に影響していると考えられています。
・ 初潮年齢が早い(11歳以下)
・ 初産年齢が高い
・ 妊娠、出産数が少ない、又はない
・ 閉経が遅い(55歳以上)
・ ホルモン補充療法を受けている
・ 血縁者に乳がんや卵巣がんになった人がいる
・ 肥満
・ アルコールをたくさん飲む
・ 欧米型の食事を好む
女性の乳房には、母乳を分泌する乳腺組織があります。乳腺は、母乳を産生する「小葉」と、母乳を乳頭まで運ぶ「乳管」に分けられます。乳がんの約90%は、小葉から乳管への移行部に発生して乳管の内側に広がっていく乳管がんで、5〜10%が小葉の組織から発生する小葉がんです。
初期の乳がんでは、食欲がなかったり体調が悪くなるといった全身症状はほとんどありません。このため唯一の手がかりともいえる乳房の変化を放置していると、がん細胞は増殖し、乳腺だけにとどまらず、リンパ節や肺、骨など全身に広がり、命を脅かすことになってしまいます。
乳がんを発見するきっかけとなる症状の90%以上は「しこり」です。痛みは原則としてありませんが、乳腺症を合併した場合や特殊なタイプの乳がん(炎症性乳がん)などでは痛みを伴うことがあります。この他、乳房にひきつれやくぼみができたり、乳頭から分泌物が出たり、ただれや変形がおこることもあります。
・ 乳房にしこりがある。
・ 乳房にひきつれ、くぼみがある。
・ 乳頭から分泌物がでる。
・ 乳頭が陥没したり、ただれや変形がある。
・ わきの下にグリグリがある。
乳房にしこりが見つかっても、ほとんどは「乳腺症」など良性の病気ですので、むやみに不安がる必要はありません。しかし、がんと鑑別しにくいものもありますので、しこりが触れたり「何か変だな」と感じたら自分で判断しないで、迷わず専門医に受診することが大切です。
乳がんが見つかっても、早くに見つけて治療すれば、より高い確率で完全に治すことができます。さらに、乳房を温存しながら、わずかの切除手術でがんを切り除くことも可能です。
乳がんの早期発見の秘訣は、「自己検診」の習慣を身につけること、そして「乳がん検診」を定期的に受けることにあります。あなたとあなたの大切な人のために、自己検診や定期健診で乳がんの早期発見を心がけてください。
乳腺外来のご案内(乳腺ドック) ※女性技師によるマンモグラフィ・乳腺エコー