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脳梗塞を防ぐために

脳梗塞の“前触れ”である一過性脳虚血発作(TIA)は、脳梗塞発症リスクが極めて高く、15~20%が3ヶ月以内(その約半数が48時間以内)に脳梗塞を発症しています。近年、経口抗凝固薬など、極めて有効で即効性のある抗血栓薬が登場しました。また、早期から積極的に抗血小板薬を投与することで、TIAの予後を大幅に改善できることが示されました。TIA は、初診時には症状が消失していることがほとんどで、問診が極めて重要になります。MRIや頚動脈エコーなどの画像診断と組み合わせることにより正確な診断が可能となり、脳梗塞発症予防のための治療を行えます。

日本人の脳卒中について

欧米人と日本人を比べると、日本人は心臓よりも脳に事象が起こりやすくて、しかも出血性のリスクが高い傾向にあります。米国人の場合は、脳卒中と心筋梗塞の比率はだいたい1対2で心筋梗塞の方が多く、それに対して日本人の場合には、その比率はまったく逆で脳卒中が心筋梗塞の2倍以上発症しています。以前日本では脳梗塞よりも脳出血の比率が高かったのですが、最近では脳梗塞の比率が高まり、脳卒中全体の約4分の3を脳梗塞が占めるようになっています。血圧管理の徹底により、脳出血は減少しましたが、高齢化に加え糖尿病、脂質異常症などの代謝性の危険因子の保有率が高まったため、脳梗塞(特にアテローム血栓性脳梗塞)の比率が増えました。

食生活と脳卒中について(EPAの効果)

脳出血が減少する一方、脳梗塞が増加し、さらに脳梗塞の臨床病型はラクナ梗塞が減少し、アテローム血栓性脳梗塞の増加が認められていますが、これらの変化は日本人の食生活の変化が最大の原因と考えられています。わが国におけるエネルギー摂取で脂質の占める割合は著明に増加しています。実際、日本人の総コレステロール値は米国の平均を上回る状況になっています。この要因の1つに魚の摂取量の減少が挙げられ、総脂肪に対するエイコサペンタエン酸(EPA)消費量比率の低下にも反映しており、対照的に脳梗塞や心筋梗塞などの虚血性心疾患が増加していることが明らかになっています。魚食によって虚血性心疾患や脳卒中の低減することから、魚油に含まれるEPAの働きが示唆されています。

三大脳卒中について

脳血管障害のうち、脳梗塞、くも膜下出血、脳出血は三大脳卒中といわれています。

-脳梗塞-
三大脳卒中のうち最も多いのは脳梗塞で、全体の7~8割を占める。これにはラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞の3病型があるが、かつて大半を占めたラクナ梗塞は減少し、現在は心原性脳塞栓症とアテローム血栓性脳梗塞が増加している。

-くも膜下出血-
脳卒中のうち、くも膜下出血は最も少ないが、生命予後への影響は非常に大きい。若年者に多く、女性の発症率は男性より2倍近く高く、日本での発症率は欧米より高い。喫煙、アルコール多飲、高血圧が重要な危険因子であるが、遺伝的要因も大きく、二親等以内に発症者を持つ人の約4人中1人に脳動脈瘤が検出される。かつて、発症者の3分の1は死亡し、3分の1には後遺症が残り、これに対する早期発見、予防が必要になり脳ドックが始まった。

-脳出血-
脳出血は、脳卒中の中で最も死亡率が高かったが、1960年代以降、大幅に低下した。現在、脳出血は全体の2割程度であるが、いまだに問題は残されている。危険因子としては高血圧とアルコール多飲が重要である。欧米人と日本人でアルコール代謝酵素の遺伝的背景が異なるため、日本人は少量飲酒でも悪影響となることがある。



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