慢性心不全の予防と早期診断について
世界に類をみない速さで高齢化が進む日本では、心不全患者の有病者数が急増しています。死亡統計をみても心筋梗塞や脳梗塞による循環器疾患死亡者数が横這いまたは減少傾向にあるなかで、心不全だけが増加を続けています。
慢性心不全の予防
高血圧と心筋虚血を合わせた動脈硬化症を原因とする心不全は全体の約65%を占めています。動脈硬化のリスク因子をスタートとした心不全・死への病状進展を一連の流れとし、動脈硬化を発症した時点から将来の心不全発症までを連鎖した事象としてとらえ、症状を伴った心不全発症の前段階で早期診断・早期介入が必要です。
早期診断のポイント
自覚症状がなくとも明らかなデータ悪化が心機能増悪の前兆であることも少なくないので、定期的に心電図や血中BNP値測定によるハートチェックを行い、過去のデータとの比較検討が重要になります。
-血中BNP値-
血中BNP値は心不全の診断・管理・予後を評価するのに便利で、心不全診療において欠かせない検査となっています。
-心電図-
壮高年者では症状や症候があってもなくても毎年1回は定期検査を行い、過去の心電図データとの比較を行って悪化徴候をとらえることが必要です。
-胸部X線-
肺うっ血や胸水貯留、心拡大などの経時的変化を立位正面像や右左側面像でチェックします。
-心エコー図-
心雑音の出現や血中BNP値・心電図・胸部X線所見の変化が現れた場合は、心エコー図でのハートチェックが心不全の早期診断につながります。また、陳旧性心筋梗塞や弁膜症などの器質的心疾患を有する場合は、年1回程度の心エコー図を用いたハートチェックが必要です。