アルツハイマー病について
アルツハイマー病は記憶・思考・行動に問題を起こす脳の病気で、通常の老齢化あるいは精神疾患とは異なります。アルツハイマー病は周りの人にも影響を及ぼします。介護者などはその影響を受ける1人で、アルツハイマー病にかかった人の介護は非常に困難な時があります。その結果多くの家族や友人が介護者として精神的ストレスを経験しています。アルツハイマー病の症状は時の経過と共に進み、最終的には死をもたらします。症状はさまざまですが、多くの人が初めに気づくのは、家庭や職場での物忘れです。
生活習慣病による認知症発症抑制について
アルツハイマー病の危険因子として糖尿病・高血圧が注目されています。糖尿病や高血圧といった生活習慣病の治療がアルツハイマー病を含めた認知症の発症抑制につながる可能性があります。運動などによるインスリン抵抗性の予防や糖尿病薬による糖尿病の適切な管理、降圧薬や運動による高血圧の管理もアルツハイマー病の発症及び予防につながる可能性が考えられています。
アルツハイマー治療薬
現在、アルツハイマー型認知症患者に対する治療薬はアリセプト、レミニール、メマリー、イクセロンパッチ、リバスタッチパッチがあります。アリセプトとレミニール、イクセロンパッチとリバスタッチパッチは基本的には同じ作用の薬です。レミニールは、アリセプトよりも効きが良いが、吐き気や徐脈など副作用が出ることがあり、アリセプトの効きが悪くなったらレミニールを服用するといった治療になります。少しずつ薬の量を増やすことで副作用を抑えます。メマリーは別の神経伝達物質が過剰に出て神経細胞が破壊されるのを防ぐ働きがあります。他の薬は、症状が軽度~中等度の患者が対象ですが、メマリーは中程度~重度が対象となります。貼り薬のイクセロンパッチとリバスタッチパッチは、薬が飲めない人が対象です。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の原因として最も多く、脳の神経細胞が通常の老化よりも減ってしまうことで脳が萎縮していく病気です。症状は、中核症状(認知機能の障害)と行動・心理症状の2つに大きく分類されます。また、糖尿病、高血圧症・脂質異常症などの生活習慣病は、血管性認知症の危険因子であるとともに、アルツハイマー型認知症の発症や進展にも関与することが明らかになっています。
-アルツハイマー型認知症治療-
アルツハイマー型認知症は、脳の中にたんぱく質がたまり、神経細胞を壊していきます。神経細胞の減少に伴い、アセチルコリンなどの神経伝達物質が減少するため、記憶機能が徐々に衰えて起こります。脳内の神経伝達物質(アセチルコリン)の減少を防ぎ、脳内コリン機能を増強させる薬物療法で進行を抑え、生活の質を向上あるいは維持します。
重症度 | 軽度 | 中等度 | 高度 |
---|---|---|---|
記憶 | ○最近の出来事をしばしば忘れる。 ○古い記憶は、ほぼ正常。 |
○最近の出来事の記憶困難。 ○古い記憶の部分脱落。 |
○新しい出来事は全く記憶できない。 ○古い記憶の多くが脱落。 |
時間、場所 人物の認識 |
○年月日が不正確。 ○場所がだいたいわかる。 |
○年月日、時間、場所が不適格。 | ○年月日、時間、場所、人物がかなり不正確。 |
会話 | ○通常の日常会話はほぼ可能。 ○記憶に頼る内容の会話は困難。 |
○通常の日常会話に時々支障がある。 ○記憶に頼る内容の会話はきわめて困難。 |
○通常の日常会話に支障がある。 |
日常生活 | ○趣味に対する感心が残る。 ○複雑な家事(料理など)がきちんとできない。 |
○注意力が減退。 ○複雑な家事がかなりできない。 ○日常生活でときに介助を要する。 |
○日常生活で全面的介助を要する。 ○しばしば失禁。 |
さまざま認知症
-脳血管性認知症-
脳血管性認知症は、脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、その部分の脳の働きが悪くなった結果、認知症になるものをいいます。
-レビー小体病(レビー小体型認知症)-
レビー小体型認知症は、もの忘れもありますが、特徴は、とても生々しい幻視がみえることです。日によって症状に変動があり、正常に思えるときと様子がおかしいときが繰返しみられます。また、歩きにくい、動きが遅い、手が不器用になるなど、パーキンソン症状がみられることがあります。アルツハイマー型認知症に対する治療薬のアリセプトが、レビー小体型認知症に大きな効果が期待できるとされています。
-前頭側頭葉変性症-
前頭側頭葉変性症は、もの忘れはみられますがあまり目立たず、人格変化が中心になります。自己中心的、短絡的な行動や、意欲低下、だらしない行動がみられるため、精神科疾患のようにみえることもしばしばあります。繰り返し行動、言語障害などもみられるようになります。