認知症について
認知症は治らないという理由で、最近まで認知症予防はできないと考えられていました。認知症の代表疾患であるアルツハイマー型認知症の初期病理変化としてアミロイドβ蛋白が沈着してきます。アミロイドβ蛋白は、不溶性で一度脳内に沈着すると溶けないと言われていましたが、近年この考え方が間違っていることが分かり、溶けるということが明らかになってきました。しかもアミロイドβ蛋白を溶かすのは薬物だけではなく非薬物でも可能であることが報告されています。
認知症の促進因子と抑制因子
認知症予防には促進因子と抑制因子があり、促進因子を減らし、抑制因子を増やすような生活をすることが第1次予防につながると考えられています。認知症発症直前に効果的な抑制因子としては、運動・知的活動・コミュニケーションが挙げられています。
-促進因子-
① 遺伝的因子
② 悪い生活習慣(喫煙・過量の飲酒・運動不足
③ 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)のコントロール不良
④ 頭部外傷・打撲
⑤ 睡眠障害(睡眠不足・質の悪い睡眠)
-抑制因子-
① 高等教育を受けること
② 良い生活習慣(禁煙・適度な運動など)
③ 生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の良好なコントロール
④ 短時間の昼寝(30分~1時間以内)
⑤ 適量の飲酒(赤ワインなど)
⑥ 食事(地中海食・青魚の摂取・カレーなど)
⑦ 嗜好品(コーヒー・紅茶など)
運動・知的活動・コミュニケーションのプログラム
もの忘れ検診と認知症予防教室は順調に広がっています。認知症は治療もできるようになり、早い段階であれば予防の可能性もあります。認知症予防教室のプログラムでは、体操からゲーム性の要素を入れた運動など、様々な内容があります。知的活動は、頭を使いながら指先を動かすということを目的としたもので、学習的なものからゲーム性の要素を入れたものまで、コミュニケーションは会話を楽しむなど、予防教室に参加することにより、多くの方と会話を交わすことができます。近年、独居の高齢者が多く、終日会話を交わさない人も少なくありません。このような3つの予防のために良い要素を備えた認知症予防教室に参加することで、有意な改善が認められ、良い状態が維持できる結果がでています。
認知症チェックリスト
○ 何かしようと思っても、何をしようとしたのか忘れてしまう
○ 以前は問題なく出来ていた仕事や家事がうまくこなせない
○ 小銭を使えずに財布にどんどん貯まっていく
○ 通い慣れた道なのに迷うことがある
○ 身だしなみを気にしなくなる
○ 何度も同じ話をしたり、同じ質問をしたりするようになった
○ しまい忘れ、置き忘れが増え、いつも探し物をしている
○ やる気がなく、何をするにもおっくうになる
○ 物の匂いがしない、匂いの区別がつかない
認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の免許更新)
改正道路交通法では免許更新時に加えて、信号無視や逆走など、認知症の影響とみられる18項目で違反した場合も認知機能検査が義務付けられました。検査の結果、認知症の恐れがあると判断されれば、医師の診断を受けなければなりません。高齢者講習についても認知機能検査の分類に応じて講習内容が変わりました。